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読書メモ:大学4年間の金融学が10時間でざっと学べる



はじめに


近年、COVID19によるパンデミックから、ロシアのウクライナ侵攻などに起因し、金融不安が世界中に広がっています。


また、日本では長期的な景気低迷により日銀による異次元金融緩和が行われてきました。

最近では、世界的なインフレによる物価高騰が起こっています。

一方、暗号資産イーサリアムでは、DeFi(分散型金融)という新しい金融サービスが誕生し、Web3ブームに一役買いました。

世界の金融情勢とイーサリアムをはじめとした暗号経済(クリプト・エコノミー)など、金融的なパラダイムにおいて断片的な知識では、正しく読み解けないと感じ「大学4年間の金融学が10時間でざっと学べる」を購入しました。

今回は、この本で学んだことを記述したいと思います。


この本について

この本は、文庫本となっており持ち運びが簡単で、アマゾンレビューも高く、約200ページで数百円という価格設定から、お手頃だと思い購入しました。

また、ポップなタイトルとは裏腹に著者は、東京大学の名誉教授が書いているということで、お手軽なわりに内容の品質も高いことを期待しておりました。



第1部 金融入門



まず、「現在財」の交換から、貨幣の誕生による価値の交換の効率化、利子や銀行の役割など、貸し借りの重要性など、現在の金融システムの基礎知識が学べます。

今年、アメリカで起きたシリコンバレー銀行の倒産の原因である「取付」問題など、銀行の脆弱性についても触れています。

中央銀行と銀行のバランスシートも取り上げられており、簿記の知識があると深く理解できます。


第2部 ファイナンス入門



第2部では、ファイナンスについて学びます。


株や債権などの価格を決める金融商品のリスクプレミアムなど、金融商品の価格決定における理論をざっと学ぶことができます。

掲載されている公式が多くそこまで詳細には触れていませんので、完璧に理解するには、詳しい書籍を購入する必要がありそうです。

また、先物・先渡取引について、他の書籍では投機的な取引として取り上げられることが多いですが、この本では、そのような金融取引がどのようにビジネスで役立つかについてもコンパクトに触れています。

例えば、3か月後に、1ドルを130円で3,000ドルの商品を輸入する先渡取引をしていれば、3か月後の相場に左右されずに390,000円 (130×3,000)で商品を輸入することができます。

仮に、3か月後に1ドルが150円に相場がなっており、先渡取引をしていなければ450,000円で輸入することになり、大変な損害を被ってしまいます。

また、オプション取引では、例えば3か月後に1ドルを140円で買う権利であるコールオプションを買えば、3か月後その権利を行使できます。

仮に3か月後に1ドルが、100円だった場合、その権利を行使しなければ良いだけです。

上記の例では、1ドル140円以下で輸入できるようになり、420,000円以下で商品を輸入できることになります(ただし、”保険料=プレミアム”を別途払う必要があります)

さらに、株価は、既に入手可能な情報が織り込み済みのため、予測できないという効率的市場仮説にもわかりやすく触れています(一方、それに従わないケースも触れています)。

他には、証券会社や銀行の役割である通貨や金融商品のマーケットメイキングについても学ぶことができます。

DeFiでは、AMM(オート・マーケット・メーカー)という仕組みがありますが、DeFiは既存の金融をブロックチェーンやスマートコントラクトを利用して発展させた仕組みであるため、既存のマーケットの仕組みを勉強することは大いに役立ちそうです。


第3部 金融論応用


この最後の部では、過去の金融史から近年の金融政策を学んでいきます。


国際金融理論の一つとして、国際金融のトリレンマも取り上げています。


これは、「自由な資本移動」、「為替相場の安定性」、「金融政策の独立性」という3つの目標を同時に達成することはできず、このうち2つの目標しか選択できないという説です。

中央銀行がどのように金利およびインフレ・デフレをコントロールしたのか、また失敗したのか過去の出来事から学びながら近年の金融政策を紐解いていきます。


例えば、量的緩和政策非伝統的金融政策について解説しています。


為替レートでは、固定レートと変動レートの長所と短所など1980年代のメキシコ通貨危機をなどを通して学びます。

また、2007~2009年に発生したリーマンショックを発端とした世界的金融危機から、ギリシャを発端としたユーロ危機など、表面的な安易なローンの貸し出しという理由だけでなく、その裏で原因となった銀行への自己資本規制などの金融政策や、それをかいくぐっ金融商品化などが発端となっていることなどにも触れられており、目から鱗でした。

そして、「バーゼルIII」「ボルカールール」など、近年の金融規制について学ぶことができます。

最後に、暗号通貨などの次世代の金融についても簡単に触れていました。


著者について

読んだ後、アカデミックおよび実務的にバランスがとれており、内容があまりに有益なため、著者を調べてみました。

著者である植田和男先生は、なんと現在の日銀総裁でした!!

日銀総裁になる人が、このような初心者向けのポップな本を出さないと思っていたので想像してませんでした(笑)。


素人にも分かりやすく網羅的な本を約200ページにまとめられる先生なので、専門家から素人である国民まで幅広い層に対応できる優秀な人だと思います。

日銀と日本の金融の舵取りを応援させていただきます。


植田先生、素晴らしい本を書いてくださり、ありがとうございます!



まとめ



近年のパンデミックやロシアのウクライナ侵攻および異常気象に起因する物価高騰、日本の財政難による増税、世界的なインフレーション、様々な出来事は金融システムへ影響し、日々の私たちの生活にも影響を与えています。

さらに、日本では人口減少、老後資金の問題など、お金に関する問題は、常に山積みです。

この本を通して、金融システムのあらゆる側面を学べ、金融を中心とした激動の世界経済を俯瞰的に見ることができるようになります。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。





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